忘れん坊の外部記憶域

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「勝手に動く」と「指示されずとも動く」の境界線

「今時の若い奴は言わないと動きやしない、指示待ちばっかりだ」

というような言説を耳にしたことがある若者は多いかと思います。まあそういうのは聞き流してしまって全然オーケーです。若手に仕事を割り振るのはマネージャーの仕事ですので、若手が指示を待って退屈しているようであればそれはマネージャーの怠慢です。それにこの手の言説は昔からずーっと言われていることですので真面目に聞く必要は無いでしょう。

 しかしある程度経験を積んで若手ではなくなると今度は明確に自主的な行動を試されるようになります。指示される前に動く、自ら考えて動く、そういった積極性を要求されるのです。これは部署のリーダーや管理職への昇進など、指示される側ではなく指示する側が向いているかどうか、実働側ではなく管理側の立場に移り変わる適性があるかを見られているのだと考えてください。指示する側が指示待ちでは困りますのでその適正判断ということです。よって昇進を望む方はこの段階で積極性や自主性を発揮できることを示す必要があります。

 

境界線がある

 ところが難しいことに、自身で考えて行動した時に言われることがあるのが「勝手に動くな」という言葉です。これは理由を知らないと混乱してしまいます。え、自分で考えて動けっていうから動いたのになんで怒られるのだ?言われずともちゃんと動いたのに?と。

 この「勝手に動く」「指示されずとも動く」の間には境界線があります。それは目には見えませんし明文化されているものではありませんが、明確に存在するのです。

 

■状況や目的に即しているか

 仕事には時と場合があります。例え同じ行動をしたとしても、その成否そのものだけでなく、求められている状況に合致しているか、その行動が目的に資するかということがとても重要です。

 例えばサッカーで考えてみましょう。こちら側が点数で勝っている時に相手からボールを奪いゴールを狙うことは積極的と評価されるでしょう。反面、点数で負けていてさらに相手が攻めてきている時にディフェンスを考えずゴール目指して前に走り出したら無謀と評価されます。

 どちらもゴールを狙っている行動なのに評価の差が出るのは、まさしく状況と目的に差があるからです。さらに点差を広げて相手を揺さぶるような攻撃は積極的であり、まずはこれ以上点差を広げられないように仕切り直すべきところでの攻撃は無謀とされます。

 これは仕事でも同様です。今すべきこと、目的を理解していること、それが状況に合致していること、それらが伴って初めて「指示されずとも動く」という評価を得ることができます。

 先に述べたように指示されずとも動くことを求められる人材とはリーダーや管理職、つまり指示を出す側です。そのような立場の人は状況の変化に合わせて組織の目的に沿った指示を出すことを求められているのであり、それが出来ていない場合は上位の意思決定者の意図から外れているために「勝手に動く」と判断されます。

 これは逆に言えば、部下の自主性を育てたいのであれば上司がちゃんと状況や目的を説明して共有しなければいけないことを意味します。何もせずにただ自主的に動けと要求するようなことは上司の責任放棄と言われても仕方がないのです。

 

■権限を理解しているか

 個々人には必ず権限とそれに付随する責任が付き纏います。リーダーや管理職は他の人よりも大きな裁量権を任されることになりますが、全てを任されるわけではありませんので責任に応じた権限の範囲を理解する能力とその権限を振るう能力を求められます。

 よって指示されずとも動くということは、持ち得る権限を理解してその範囲内で十全に辣腕を振るうという意味合いであり、現時点で任される以上の権限を越えてしまった場合は「勝手に動く」と判断されることになります。

 これは逆説的ですが、部下を「指示されずとも動く」ようにしたいのであればその分の権限を委譲する必要があることも意味しています。権限も与えずにもっと動けというのは実に勝手な言い分と言えるでしょう。

 

■適宜報告を行っているか

 指示されずとも動くということは事後報告でも良いという意味ではありません。リーダーや管理職の仕事は部下のマネジメントであり、部下の行動を把握する必要があります。よって古典ではありますが報連相が必要です。指示されていないことをやる前や経過・結果の報告を適宜行わなければ「勝手に動く」と判断されてしまいます。

 ちなみに報連相とは本来双方向のものです。上司は部下が報連相を行わないことに腹を立てるのではなく、自身の仕事であるマネジメントに必要なのですから自分から情報を取りに行く必要があります。部下から情報が上がってくるまで待っているなんて態度は指示待ちと言われても仕方ありません。

まとめ

 以上のような理由から「勝手に動く」と「指示されずとも動く」にはその差を分ける境界線があります。ラインを見極め、適切に自主性を発揮することをおススメします。そして上司側は部下が自主性を発揮できるよう環境を整えていきましょう。