忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

さあ、できる限り言い訳をするのだ!

 「言い訳をするな!」という言葉は誰しも聞いたことがあると思います。確かに言い訳をせず過ちを素直に認める行いは潔く立派なことです。一般的に言い訳は望ましい行動とはされませんし、言い訳をしない姿勢はとても好ましいものでしょう。

 

言い訳が忌避される理由

 人は過ちを犯したという恥からの現実逃避や他者からの叱責の回避、自信の無さや他責思考といった理由から言い訳をします。それは一種の自己防衛本能です。

 しかし「言い訳をするな!」と叱責をする人からすれば、どのような理由で過ちが発生したかには興味が無いのです。ただその過ちが再度発生しないよう、発生させた本人の反省と改善を求めているに過ぎません。求めているのは言い訳ではなく「すみません、もう二度と発生しないようにします」という言葉と態度なのであり、それが無いからこその叱責です。

 私自身つい言い訳をしてしまう悪癖があることから、とにかくまずは申し訳ないという姿勢をしっかりと示せるよう気を付けています。

 

あえて言い訳を言わせる

 さて・・・前段の話を全て吹き飛ばします。

 私は言い訳を言わせる派です。自らが過ちを犯した場合は可能な限り謝罪と反省を示しますが、人が過ちを犯した場合は謝罪や反省を示させるよりもできる限り言い訳を並べ立てさせます。珍しい派閥かもしれませんが、一部にはこのような変人がいるのです。

 言い訳をさせる派かどうか識別するコツは一つ、最初に説明を求めるかどうかです。過ちを報告した際に謝罪と反省の態度を示すことをまず求めるのではなく、「まずはなぜこの過ちが発生してしまったのか、説明してもらえるかな?」というように言い訳を優先させるのが言い訳をさせる派です。

 過ちを犯してしまった人が素直に「すみません、もう二度と発生しないようにします」と言うこと自体は止めません。それは美徳ですし、立派なことです。ただ、言い訳を言わせる派からすれば反省や精神的な改善は重要ではありません。失敗や間違いは誰だって起こすものですのでそれに怒っても仕方がありませんし、それよりもどのような心理や行動が過ちに繋がったかを聞き出し、具体的な再発防止策を考えたいのです。

 合理的で冷たい表現ですが、なぜその過ちが起きたかも分からないままに謝罪をされても困ります求めているのは言葉や態度ではなく再発防止策です

 

 実は言い訳には利点があります。一つはサバイバル・アスペクツ(生存者の見方)。これは以下の記事でも述べたように失敗から学ぶ手法です。言い訳の中にこそ次の失敗を避けるための知見が多く含まれています。

 また、言い訳はコミュニケーションにおいて役立つ側面もあります。過ちという危機的事態では大げさな表現で言えばその人の本性が現れるため、相手を把握するのにちょうどいいのです。

 言い訳で現れる人柄は実に様々なのですが、今回は数パターンだけ説明しましょう。

 

 例えば、事実と推論を分けて理路整然と多数の言い訳を並べて説明できるのであれば、それはしっかりと物事を考える論理的思考力と自らの能力への自信を持っていることを意味します。

 この手の人は説明によって自らの過失を理解するだけの十分な知性を有していますので、論理的に過失部分を指摘してあげれば充分に内省することができます。

 頭ごなしに叱ってはいけません。理不尽に叱ってしまってはその知性を悪用して今後は過失を隠すようになってしまいかねませんので、正しく反省すべきところだけを切り出す必要があります。

 

 言い訳が出てこずに口ごもってしまう人にはいくつかのパターンがあります。

 例えば言い訳を潔しとせず、説明しない人がいます。これは美徳ではありますが、目的は叱責ではなく再発防止であることを重々承知してもらう必要があります。この手の人は物事を他人のせいにしない自責思考を持っていますので、手順と反省点さえ分かればしっかりと内省して次回に活かしてくれることでしょう。

 また、過ちを報告すること自体に恐怖を覚えて上手く話せない人もいます。そのようなタイプを相手にする場合はとにかく報告させる時の雰囲気に気を付けなければいけません。威圧的に「ほら、言い訳してみろよ」と上から圧迫するような態度は厳禁です。特に「言い訳をするな!」という叱責は絶対にしないことを示してあげる必要があります。重要なのは恐怖に打ち勝って過ちを報告できるようになることであり、そのためには言い訳を成功させて褒めるという疑似的な成功体験を与えることが必要です。

 深く考えていないで行動している、これも言い訳が出てこない人にあるパターンです。そのようなタイプは自身で内省させても上手く問題点を捉えることができず再発防止を適切に行えない場合がありますので、時間を掛けてゆっくりと話をする姿勢が必要です。叱責ではなく、考えて行動する習慣付けこそが対策になります。

 

 自らの過ちではなく他人のせいだと言い訳する人もいます。これも内訳はいくつかのパターンがありますが、いずれにしても頭ごなしの叱責は悪影響しかもたらしません。プライドが高いタイプであれば反発的になるだけですし、本当に他人のせいだった場合は腑に落ちない気持ちになってしまうでしょう。

 他責で語る人の場合は感情論を据え置く必要があります。善悪や良し悪しで物事を識別しても聞き入れてもらえないからです。改善して欲しい行動だけを切り分けて伝えましょう。

 

 いくつか定型的に述べましたが、人の考えはそれこそ人それぞれです。必ずしも型に嵌めて説明が付くものではありませんし、今回のパターンもほんの一例です。

 しかし、だからこそ、言い訳を言わせるというのは相手の人柄を把握してより良い関係を築くためのコミュニケーション手法の一つだと、私はそう考えています。相手が大人であろうと子どもであろうと、人様の考えや気持ちを変革しようというのならばこちらも真摯に向き合い真剣に言葉を尽くすべきなのです。

 

まったく万能ではないので注意

 言い訳の取り扱いをつらつらと述べてきましたが、とはいえ、言い訳は言い訳を言わせる派以外には絶対に用いてはいけない禁止行為ですので気を付けてください。「まずはなぜこの過ちが発生してしまったのか、説明してもらえるかな?」というキーワードを言う人以外に使ってしまっては、「言い訳をするな!」という叱責コンボを食らうだけですので。相手がそういうタイプの場合は素直に言い訳をしないのが一番です。

 

 

余談

 たまに居る、回避不能トラップを駆使する人。

「どうしてこんなことが起きた!説明してみろ!」

「〇〇〇という事情がありまして」

「言い訳するな!」

「え!?」

 言い訳を言わせる派かどうかの見極めはとても難しいので、要注意です。