忘れん坊の外部記憶域

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そもそも『貧困』とはなんだろう?

 政治や経済、格差や社会を語る上で頻繁に出てくる言葉の一つに『貧困』があります。

 しかし具体的に何をもって貧困と指しているのか、どのような状態が貧困なのかは個々人によって異なるイメージを持っていることでしょう。頻出するとはいえ、よくよく考えてみると『貧困』という言葉はバズワード化していそうです。

 

言葉の整理

 『貧困』を辞書で引けば次の通りです。

1 貧しくて生活に困っていること。また、そのさま。「―の中に育つ」「―な家庭」

2 大切なものが欠けていること。内容に乏しいこと。また、そのさま。「政策の―」「―な精神」

貧困(ひんこん)の意味・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書

 政治経済や社会問題で扱われる『貧困』は主に前者の意味が多いでしょう。しかし相対的貧困のように後者の意味で用いられる場合もあります。

 『貧困』を表す英単語は様々ありますが、国連や国際機関は『poverty』を用いることが多いです。povertyは[貧乏/貧困/欠乏/欠如/不足/不毛]といった意味を持つ単語です。

 メジャーな例として、SDGsのGoal 1は「貧困を無くそう」であり、原文では「End poverty in all its forms everywhere(あらゆる場所であらゆる形態の貧困に終止符を打つ)」であることからも分かるように、国際的な話題で用いられる『貧困』の英単語は『poverty』です。

https://www.un.org/sustainabledevelopment/poverty/

 

 SDGsでも”あらゆる形態”と挙げられているように、貧困には様々な定義があります。

 世界銀行が定義する狭義では1日1.90ドル未満で生活している人を指しています。

 各国でも自国の所得水準からそれぞれの貧困線を設定しています。

 また国連はもっと広い意味合いで定義しています。

Poverty is about more than a lack of income. It has a range of different socioeconomic dimensions, including: the ability to access services and social protection measures and to express opinions and choice; the power to negotiate; and social status, decent work and opportunities. 

貧困とは単に収入が無いことではありません。サービスや社会的保護手段へアクセスして意見や選択を表明する能力、交渉する能力、社会的地位、ディセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に就く機会など、様々な社会経済的側面を持っています。

Poverty | UN Global Compact

 

貧困の問題

 ただ、日本語で『貧困』と言うとどうにも「貧しくて生活に困っていること」、つまり物質的・経済的な面がイメージされてしまうことが多いかもしれません。

 実際、「生理の貧困」が過去にネット上で議論になった際も、お金だけに限らないアクセスの欠如全般が本来の課題であるのにも関わらず、ネット上での議論は金銭面での話がほとんどになっていました。

ただ、「生理の貧困」は国際NGOや国連女性機関による「Period Poverty」の和訳で、生理用品へのアクセスの欠如全般が問題とされています。つまり貧困といった経済問題だけではなく、周囲の理解不足や羞恥心、家族の無知や育児放棄、生理のタブー視や男尊女卑社会といった様々な課題を包括的に解決することを目的とした人権尊重の活動です。

 

 貧困の本質的な問題は「お金が無いこと」ではなく「困っていること」です。お金があろうがなかろうが「困っていること」自体が問題であり、貧困を解決するためには「困っていること」自体の解消に力点を置く必要があります。

 

 個人的な見解ではありますが、経済的な側面に着目され過ぎないように、『poverty』は『貧困』よりも『欠如』と訳したほうがいいような気はします。もしくは『貧困』の一般的なイメージを変革すること、すなわち貧乏困窮の両側面を併せ持つものだと認知を変える必要がありそうです。

 

結言

 poverty[貧困/欠如]は人類が撲滅することを目指すべき目標の一つだと考えます。

 だからこそ皆で足並みを揃えて対策に尽力できるよう、何を貧困と呼び、どんな課題を解決し、どういった問題を解消する必要があるか、その定義をしっかりと共有する必要があると愚考します。