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自衛隊・防衛問題に関する世論調査の内訳を見る

 自衛論(同盟を含む)と非武装論の対立に関して、自衛論の視点からの見解を述べる記事を書いているのですが、ふと、そもそも防衛に関して世論はどのような傾向を持っているのか興味が湧きました。

 そんな理由で、趣味の情報収集がてら、世論調査結果の数字を参照してみたいと思います。

 

 今回は内閣府が例年行っている世論調査から、自衛隊・防衛問題に関する設問の内、気になる数値を拾って見ていきます。

 本記事における図表の引用元は、全て以下のサイトからとします。

自衛隊・防衛問題に関する世論調査(令和4年11月調査) - 内閣府

 

問5. 自衛隊の規模の考え

 自衛隊の規模については増強が41.5%、現状維持が53.0%、縮小が3.6%と、現状維持が最も多くなっています。但し平成30年の世論調査では増強が29.1%、現状維持が60.1%、縮小が4.5%であったことから、増強の世論が高まっているとも取れます。

 都市の規模では人口規模の少ないほうが僅かに現状維持の比率が高く、男女別では女性のほうが現状維持の比率が高くなっています。年齢別では大きな差異は見られません。

 

問8. 身近な人が自衛隊員になることの賛否

 身内が自衛隊員になることについては、賛成が68.7%、反対が25.0%と、賛成のほうが主流のようです。

 都市の規模ではそこまで大きな差異はなく、性別では男性よりも女性のほうが反対とする比率が高いです。年代別では若年層よりも年配層のほうが賛成の比率が高くなっています。

 

問9. 自衛隊員になることに賛成する理由

 賛成の理由は様々あります。

 都市の規模や性別ではそこまで大きな違いはありません。

 少し興味深いのが年齢別による賛成理由の違いです。

 年配層では「日本の平和と独立を守るという誇りのある仕事だから」「国際社会の平和と安全に役立つ仕事だから」「団体生活をすることにより、しっかりとした人間になるから」といった国家や集団の目線による賛成が多いのに対して、若年層では「立派な仕事のひとつだから」「公務員として身分が安定しているから」といった個人の目線による賛成が多くなっており、逆に国家や集団の目線による賛成は少なくなっています。

 

問10. 自衛隊員になることに反対する理由

 反対する理由も様々あります。

 都市の規模では若干の傾向はあるように見えますが、回答数が少ないためブレの可能性も除外できません。

 性別では男性が「社会的評価」を気に掛ける比率が高いのに対して、女性は「危険」「実情が分からない」ことを理由とする比率が高くなっています。

 また、問5で自衛隊の増強に賛同する回答をしたのは男性が50.3%、女性が33.6%であるのに対して、問10で「自衛隊の必要性を認めていないから」と回答したのは男性が5.9%、女性が1.3%となっています。

 これらの数値から、女性は自衛隊の現状維持を指示する比率が高く、男性は増強から廃止まで幅広い分布を持っていることが分かります。

 

問11. 日本が外国から侵略された場合の態度

 問11では性別と年齢別で回答に傾向が見られます。

 男性はより自衛隊に協力的な姿勢を取ることを回答し、女性は武力によらない抵抗か何ともいえないとする回答が多くなっています。

 また30~39歳の世代だけは志願や自衛隊への協力を回答する比率が高くなっていることも特徴的です。

 

問15. 日本が戦争に巻き込まれる危険があることの考え

 日本が戦争に巻き込まれる危険があることへの考えは、危険があるは86.2%、危険がないは12.8%です。

 過去の世論調査と比べて、危険があると考える人は最大の比率になりました。

 都市の規模や性別での大きな違いはありませんが、僅かばかりの傾向として年齢別では若年層のほうが危険があると考えているようです。

 

問16. 危険があると思う理由

 危険があると思う理由は性別と年齢別で傾向が見られます。

 性別では女性よりも男性の方が国連が不十分なためだと考えています。

 年齢別では若年層のほうが国際的な緊張や対立が高まっていると感じているのに対して、年配層は国連の機能不全や自衛力不足を理由としています。

 また、日米安保条約の存在を危険の理由とする回答も10%前後あり、それが世代を問わないことが分かります。

 

問17. 危険がないと思う理由

 危険がないと思う理由は回答数が少なく、比率のブレに大きな影響を与えていると考えられます。

 性別では男性よりも女性のほうが戦争放棄の憲法があることを理由とする比率が高くなっています。

 年齢別では50~59歳だけ他の世代と異なる回答傾向を示していますが、回答数が少ないため理由は不明です。

 

まとめ

【総論】

  • 自衛隊の規模は「現状維持」が最大多数。但し増強が拮抗してきている。
  • 8割以上が戦争への危機感を持っている。

【都市の規模】

  • 都市の規模では回答に大きな差異はないが、傾向としては都市部の方が変化を望んでいる。

【性別】

  • 戦争への危機感は男女で差が見られない。
  • 女性は自衛隊規模について現状維持の比率が高く、男性は自衛隊への賛同・協力や軍備増強を望む比率が高い。しかし同時に、自衛隊の必要性を認めていない比率は男性のほうが高い。
  • 男性は国連に対する期待感が高く、女性は憲法九条への期待感が高い。

【年齢別】

  • 世代での顕著な差は見られないが、自衛隊への賛同理由や日本が戦争に巻き込まれると考える理由は若年層と年配層で若干傾向が異なる。
  • 戦争が起こる恐れについて、若年層は緊張や対立を理由としているのに対して、年配層は国連の機能不全や自衛力の不足を理由としている。

 

感想

 いくつかの点で興味深い数値を見ることができました。

 

 男女で二分して考えることにあまり意味はないものの、自衛隊の規模について男性は増強の比率が現状維持を超えたのに対して女性は現状維持が増強の倍程度あることは特徴的だと思います。また、縮小を希望する比率は男女で差が無いことは少し意外でした。

 

 身近な人が自衛隊員になることへの賛否が性別や年齢別で異なることは想像通りでしたが、世代間でその理由が違ったことは印象的です。

 本記事では引用していないですが、「防衛を教育で取り上げる必要があるか」の問いでは賛成が89.3%と高いのですが、若年層は積極的賛成が6割近くいるのに対して、年配層の積極的賛成は4割程度です。若年層は個人を重視するものの教育には積極的、年配層は国家を重視するものの教育にはそこまで、と差が出ているのは少し面白みがあります。

 

 戦争への危機感についても、若年層よりも年配層の方が自衛力の不足を理由として挙げているのは驚きです。てっきり若年層のほうが血気に逸って武装を考えているのかと誤解していました。

 

 日米安保を危険のある理由と挙げている人が世代を問わないのもまた気になる数値です。てっきりこれは世代の差が出るかと思っていました。

 逆に危険のない理由に日米安保を挙げている人は年配層のほうが高いこともまた意外でした。この比率は安保闘争などを経験していない若年層のほうが高いと思っていましたので。

 

 憲法九条に対する見方の違いで男女差が出ているのは少し興味深いところです。理由はどうにも分かりませんが、少なくとも世論調査の数字上は明らかに差があります。

 

 都会と田舎で思ったよりも差が出ていないことは少しだけ意外でした。日本はアメリカのように都会はリベラルで田舎は保守といった明確な分断が起きているわけではないようです。

 

 総じて、思っていたよりも自身の認識とズレがあったため、人々の意識に関する情報は自身の認知バイアスに囚われないよう具体的な数値データを参照するのが一番だと、肝に銘じる必要がありそうです。