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日本は自然災害への暴露が極めて高い:WorldRiskReport2022を見る

 日本に長年住んでいると慣れてしまうため、言葉では分かっていてもあまり実感的には分かりにくいことの一つとして、日本は自然災害が多い国です。

 

 とはいえ実際にどのくらい多いのか、よその国と比較するとどの程度なのか、少し興味が湧きます。

 自然災害の頻度やそのリスクは様々な機関が数値化して評価していますので、今回はその一つとしてWorldRiskIndexを見ていきます。

 

WorldRiskIndex(世界リスク指数)

 WorldRiskInxexはドイツの国際協力団体であるBündnis Entwicklung Hilftと人道研究を行っているRuhr University Bochum – Institute for International Law of Peace and Armed Conflict (IFHV)の協力によって作成されている指標です。同団体が毎年発行しているWorldRiskReportに記載されています。

 WorldRiskIndexは気候変動の悪影響を含む自然災害のリスクを示しており、公的機関が公開している世界中でアクセス可能なデータベースを用いて、各国毎に数値化されています。

 指数は災害への暴露(Exposure)災害に対する脆弱性(Vulnerability)災害への感受性(Susceptibility)対処能力の欠如(Lack of Coping Capacities)適応能力の欠如(Lack of Adaptive Capacities)の5項目からなります。合計100個の指標を用いて、それぞれの項目を0-100までの範囲でスケーリングして最終的な指数とランクを定めています。ランクが高いほど自然災害に対するリスクが大きい国です。

 

各項目の詳細

 災害への暴露(Exposure)は極端な自然災害の影響に晒される程度を示しています。これは地震や津波、河川や海岸の洪水、サイクロン、干ばつ、海面上昇といった危険度と、それらに影響を受ける人口や物件などの危険性の両側面を含みます。

 災害に対する脆弱性(Vulnerability)は自然災害によってどのように社会が不安定化し、損害を受けやすいかを示しています。この数値は残りの3項目から定まります。

 災害への感受性(Susceptibility)は自然災害の直接的な影響を軽減するための回復力と資源の程度を示しており、災害状態に陥る可能性を全体的に高める社会の構造的特性や条件によって定まります。

 対処能力の欠如(Lack of Coping Capacities)は自然災害に対して被害を軽減し回復を行うための社会の能力や対策の欠如によって定まります。

 適応能力の欠如(Lack of Adaptive Capacities)は対処能力とは対照的に、将来の損害を軽減し、予測的に回避するためのプロセスや戦略の欠如によって定まります。

 

 世界リスク指数(WorldRiskIndex)は暴露(Exposure)と脆弱性(Vulnerability)の相乗平均で算出されます。

 WorldRiskIndex=√(Exposure×Vulnerability)

 

 また、各項目はそれぞれVery Low~Low~Medium~High~Very High(とても低い~とても高い)の5分割で評価されており、程度を比較しやすくなっています。

 

経年での変化

 まずは参考として、過去5年の日本のランク及び数値を見てみます。

 ただし2022年から指標の計算方法に変更が加えられているため数値の単純比較はできないことに注意が必要です。

 世界の国々約190の中でも、日本は上位のランクに位置付けられていることが分かります。2022年は28位です。

 2022年を除いた数値を見ると、災害への暴露(Exposure)は年毎の変動が大きく、それ以外は安定しています。ランクは災害への暴露の数値と連動するように上下していることから、災害への暴露の度合いがその年のランクに大きく影響することが分かるかと思います。

 

2022年の評価

 次に2022年の日本の数値に対する程度評価を見てみます。

 暴露は非常に高く、脆弱性は非常に低いと評価されています。それでもWorldRiskIndex(世界リスク指数)が高くランクも28位と上位に位置していることは、日本の自然災害への暴露が非常に高いことを意味しています。

 

 具体的に、暴露の高い国を順にリストしてみます。

 日本は世界で3番目に自然災害への暴露が高い国です

 暴露の高い上位10国は世界リスク指数も高いランクに位置しています。その中でも日本は28位と健闘しており、他国に比べて自然災害への備えが強靭であることがこの表から読み解けます。

 

結言

 日本は自然災害が多く、2022年の報告では災害への暴露が世界で3番目に高い国です。

 しかし自然災害への感受性や対処・適応能力は高く評価されており、脆弱ではないと判定されています。