忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

しようもないトラウマは誰にだってある

 トラウマ。心の傷。心的外傷。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)や急性ストレス障害とまで至らずとも、ふとした時に思い出してストレスを感じたり、人生に何らかの影響を与えているもの、それがトラウマです。

 トラウマは本人からすれば重大であっても、他人からすればどうでもいいようなことである場合もあります。

 今回は私の持つトラウマの話をしてみましょう。

 

 ちなみに、どうしようもないまでに雑談です。

 タイトルの「しようもない」は「為す術がない/手に負えない」と「たわいもない/くだらない」のダブルミーニングです。

 つまり、しようもない話です。

 

仕事の都合

 本当にくだらない話だが、私は筋トレがトラウマだ。

 他人が筋トレをする分には構わないが、自分でするのはどうにも気が引ける。そのため、私が日常的にする運動はもっぱら有酸素運動ばかりだ。

 

 少し昔話をしてみよう。

 私が親元を離れて大学に通っていた時期は大変に貧乏だった。日々の食事にも困っていたほどだったため、カロリーの浪費はまごうことなき敵だった

 筋トレをして筋肉を鍛えることなど1プランク長たりとも頭をよぎらず、せっかく摂取できたカロリーは全て基礎代謝に回していた。

 ちなみにこのプランクは物理学者マックス・プランクのプランクが元になっている。うつ伏せになった状態で前腕・肘・つま先を地面につき、その姿勢をキープする体幹トレーニングのことではない。

 

 私の父は技術者であり、親族にもガタイの良い労働者がおらずほとんどがデスクワーカーであった。筋肉を誇示する大人が身近に居なかったためか私には若年男性にありがちなマッチョへの願望が薄く、子どもの頃から筋肉を鍛えるよりは脳を鍛える方が好みだった。

 私の脳が鍛えられているかと言えば、もちろんノーだが。

 

 そんな私が社会人になった。

 大学の工学部を出てメーカーの設計部署に配属された私は、仕事の都合で筋トレを行うことになった

 何を言っているのか分からないかもしれないが、実際に業務の都合なのだから仕方がない。筋トレが業務命令だったのだ。

 もちろん設計業務と筋肉に関連性はまったくもってない。筋肉がなければ図面が引けないわけもなし、警察や消防ではないのだから健全で頑強な肉体を保持することはデスクワーカーである設計者の職責ではない。

 

 実のところ、設計業務のために筋トレを指示されたわけではなかった。あまり詳しくは述べないが、弊社では一部の若年男性社員に筋トレが必要になる別業務が存在している、ただそれだけの話である。

 業務命令なのだから当然給料が発生する。

 私たちは残業時間に筋トレをして残業代を貰っていた。新入社員としては収入アップのありがたい道筋でもあったことを記憶している。

 補足的、あるいは言い訳的に述べておくならば、その業務はブラック企業的なものではなく、志願制であり、さらに言えば「社会人 企業 スポーツ 実業団」といったフレーズに関連する業務なので、実に健全かつ真っ当であったことを記しておく。

 

帰省時の衝撃

 そんなわけで、私が生きていた中で社会人1年生の頃が最も筋肉を保有していた。

 お金をもらって筋肉まで付く。実に素晴らしい経験だ。

 

 筋トレが定着した生活を続ける最中、社会人になって初めての正月が訪れた。

 高校卒業と同時に家を出て以来さっぱり里帰りをしない親不孝者の私だが、さすがに盆と正月は実家に顔を出す。大学生の頃はその里帰りの費用すらロクに無かったためほとんど帰っていなかったが、社会人になって真っ当に収入を得られるようになった以上、せめて盆と正月には帰ろう。そう思っての帰省だった。

 

 実家には数年ぶりにまともに顔を合わせた姉がいた。

 まともに顔を合わせていなかったのはもちろん、私がロクに里帰りをしなかったせいだ。

 その姉が私を見ての第一声。

 

「うわ、逆三角形のシルエットになってる。童顔のくせに似合ってないんだけど。ちょっと気持ち悪い」

 

神の言葉は重い

 私の姉は学業優秀、規律正しく努力家で、金銭感覚にも優れている。人に厳しく、しかし自分にはより厳しい学級委員長タイプである。

 対して私は学業壊滅、規律に甘く不真面目で、金銭感覚は死んでいる。人にも自分にも甘く、適当で大雑把な人間だ。

 そんな立派な姉だから私は好きだが、そんな立派な姉だから私が嫌いだ。

 

 子どもの頃から私にとって姉は上位者、或いは神であった。地元住民から親しまれつつも時に災難をもたらすために怒りを買わないよう恐れられてもいるような土着の神に近い存在であった。姉の言葉に逆らうことは神に逆らうことであり、それは自然の摂理に反していることだと、幼少期における姉からの数多の鉄拳制裁で体が覚えている。

 

 神の言葉は重い。

 逆三角形のシルエットは神の逆鱗に触れかねない。

 翌年度以降、その業務への志願をせず、私は筋トレを行わなくなった。

 

結言

 筋トレではなく姉がトラウマな可能性もありますが、それはそれでまあ悪くはないと思う私は、ただのシスコンなのではないかと思います。

 

 

余談

 兄弟姉妹の一番上が真面目タイプだと、下は緩い性格に育つような気がします。