東京都知事選の季節です。
私も一応は人並み程度に政治への参画意識を持っていますので、このブログでも度々政治的な話題の記事を書いていますし政治的な話を忌避するつもりもありません。
ただ、地方選挙は国政とは違いその地方での選挙権を持つ人が決めることだと思っています。例えば私は世間で話題となりがちな大阪・静岡・沖縄などの地方選挙に関してはコメントをしません。
そんな考えがあるため、今は東京に住んでいるものの引越したばかりで都知事選への投票権が無い私としては、昨今の東京都知事選一色となった政治界隈に対して今一つコメントに困っているところではあります。都知事選の話をすべきか、しないべきか、それが問題です。
そんなわけで少し力点をずらし、今回は都知事選の候補者についての私見ではなく有権者がどうやって投票先を選んでいるかについての見解を述べていくこととしましょう。
政治を真面目に考える人の埒外
選挙が近づくと各候補者を支持する人々の舌戦が各所で繰り広げられます。自陣の陣営を持ち上げる言説のみならず他陣営を貶めるような言説も増えるため、政治にあまり関心が無い人からすれば少し近寄りがたい空気感を醸し出すようになります。
もちろん私は関心がある層ですので気にせず各所の見解を拾いにいきますが、政治が世間から忌避される大きな理由の一つがこの殺伐とした空気感なため、なんとも難しいものです。
そんな界隈でよく見かける言説に「なぜあの人を支持しているのか理解できない」があります。今回の都知事選に関するネット上のコメントでも多々見かけています。
言いたいことはとてもよく分かるのですが、民主主義政治においてこれはかなり致命的な感覚だと認識する必要があるでしょう。
なにせ選挙とは多数派を形成することが勝利条件であり、票を増やすためには他陣営を支持している人がなぜその陣営を支持しているのかを理解してその理由を自陣営に取り込むことが不可欠なためです。
特に地方選であれば現職は「満足」「普通」「不満」のうち、相当な失政をしない限り「満足」「普通」からの支持を獲得して多数派を形成できるため、現職以外の候補者を支持している人は積極的に「現職がなぜ支持されているか」を分析し、理解し、自陣営の戦略に取り込まなくてはなりません。
今回は現職である小池百合子東京都知事にフォーカスをしてみましょう。
「なぜ小池さんの人気があるかが理解できない」と述べられている方々の見解を見ると、その多くは「政治的な不信感」に立脚していると感じます。学歴や政治的な経歴、政治的不透明さや政治的信念に納得がいかないことが小池さんへの不支持としての根底にありそうです。もちろん生活に満足しておらずもっと行政に援助を求める層も不支持層には含まれます。
逆に小池さんを支持している層はどの点を重視しているかを見るため、前回の都知事選でのNHKアンケート結果を見てみましょう。2024年の都知事選とは必ずしもイコールにはならないでしょうが、概ねの傾向は掴めるかと思います。
NHKの調査結果より、発信力・リーダーシップ・決断力・行政知識・国との交渉力・人当たりの良さが特に評価されている項目です。
つまるところ小池さんの人気があるのは凄く簡単で、落ち着いておっとりしたように見えるリーダーとしての発信をしているから人気がある、つまり見た目や態度や話し方が理由です。
言ってはなんですが有名人の評価なんてそんなものです。メディアに出てくる見た目やキャラクターが重要であって、実態がどうかはさほど興味を持たれません。
いや、まあ、 政治に関心がある真面目な人の「芸能人や俳優じゃないんだから政治家をそんな理由で選ぶんじゃない」と思う気持ちはたいへんよく分かるのですが、政治的な経歴や潔癖度合いは政治に関心を持って情報を集めてきた人でなければ知らないことであり、なぜそういった政治的情報を集めてこなかったかと言えばその点を重視していないために他なりません。知らないから関心がないのではなく、そこが争点だと思っていないから情報を集めていないのであって、政治的な不完全性を突いても関心を持っていない層には響きません。
現職を倒して当選を狙うのであれば、そういった層から理解されるような戦略を取ることが必須です。
結言
地方選で現職が負ける最大の条件は「現状に不満を持っている層が過半数を占めること」です。現状に満足している層が過半数を超えている場合、わざわざ首長を変えるムーブメントは沸き起こりません。
よって「現職の問題点を指摘して人々の不満を焚き付ける」ことも一つの合理的な戦略ですし政治的には正しいのですが、東京都知事選の場合は「非攻撃的」な点が現職の強みとなっているため、攻撃的な戦略は今の東京で支持者を獲得することには繋がりにくい悪手ではないかと愚考します。
少なくとも取るべき戦略は「こっちに投票したほうがもっと満足度が増す」ことのアピールであり、現状に不満を持っていない層に対して「不満を持っていないのはおかしい!」と攻撃しても「いや、そんなのこっちの勝手だろう」と反発をされてしまい票を集めることには繋がらないでしょう。
もっと言えば、政治に無関心とされる層は政治的な力学に無知なだけであって、実生活に関わる政治要素に関しては充分な知見を持っていたりします。見ている側面が違うだけで、無知だと侮ることは少なくとも選挙で勝ちたいと考えている陣営が取るべき行動ではありません。