忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

エネルギーは安さも重要である

 

 単純な収支の問題。

 

コモディティ化(一般化)の基本

 昨今のエネルギー関連のニュースを見れば、太陽光や風力といった再生可能エネルギー、水素やアンモニアのような二次エネルギー、二酸化炭素と水素から生成した合成燃料、そういった様々な高付加価値のエネルギー商品が喧伝されています。

 まず前提として、そういったものが研究開発されることはとても良いことです。

 生物は熱力学的法則に従ってエネルギーを外部から取り入れて消費することで生存を保っており、それは集団や社会のような自然人以外の形態でも同様です。何もしなければエントロピーは増大していくばかりであり、系のエントロピーを低く維持するためには外部から低エントロピーを取り入れて、代わりにゴミとして高エントロピーを外部に捨てる、そのようなサイクルを続ける必要があります。

 よって様々な方法で低エントロピーの資源を確保しようと行動することは将来的な持続性に対して一定の意味があります。

 

 ただ、その探求行為自体には価値があるとはいえ、それによって可能になった現時点での技術が同時に高い価値を持っているかと言えば必ずしもそうとは限りません。

 それについてコモディティの概念を用いて説明します。

 コモディティとは『特質がなく品質や機能などの面で他と差別化がされていない商品』を指す言葉です。商品がそのような状態になることをコモディティ化と言います。もっと要約してしまえば一般化です。

 例えば画期的な構造の家電があったとしましょう。

 その家電が市場へ登場した時点では他社と大きく差別化されることから売価に高い付加価値を載せることができます。しかし競合他社が類似構造の製品を市場へ投入していくにつれて商品の差別化が難しくなり、いずれその特質性は一般的なものとなります。そうなった状態の商品をコモディティ、そうなることをコモディティ化と呼びます。

 

 コモディティ化(一般化)した商品は、とてもとても単純な方程式として、価格≒消費資源量≒投入エネルギー量となります。

 非コモディティ商品であれば特質性や特別感による価格の上乗せが可能ですが、価格以外で差別化のできないコモディティ商品は市場原理に基づいた価格競争によって可能な限り原価低減が図られるためです。コモディティ商品の価格差はほぼ原価の差、つまり消費資源量や投入エネルギー量の差と近似します。

 

 そしてエネルギーとは典型的なコモディティです。どこで誰がどう生産しようとも顧客からすれば特質性も品質も機能も変わりません。

 よって高コストのエネルギーとはそのエネルギーを生み出すための原価、つまり消費資源量や投入エネルギー量が大きいことを意味します。設備生産に必要な資源量であったり、輸送や貯蓄に要するエネルギーであったり、維持や安定化に要するエネルギーであったりと高コストには様々な理由はありますが、いずれにしてもそのエネルギー生産自体に用いている資源やエネルギーが多いからこそコストが高くなります。

 よってどれだけ環境に良さそうなラベルの貼られたエネルギーであっても、その価格が高いのであればそれは消費資源が多く環境への負荷が高いのだと留意しておく必要があります。

 

結言

 もちろんこれは現時点の話です。いずれ研究開発が進んで低コストでエネルギー生産が可能になればそれは環境への負荷も低減されたことを意味しますし、原油価格の変動などでコストが逆転すればやはり資源効率やエネルギー効率の面で有力な選択肢となります。

 ただ、少なくとも高コストのエネルギーは環境負荷も高いものであり、エネルギーに貼られたラベルだけではなく価格を見る必要がある、そういった視点を持っていてもよいかと思います。