例えばAP通信とFoxニュースを交互に見ると分かるように、同じアメリカの同じ事象を報道しているとは思えないほど乖離しています。比較してみると報道の偏向に関する手法を学べますので、ちょっとした脳トレにおススメです。
比較しなければ分からない
三次元の物を写真のように二次元的手法で切り取って表現する場合は複数の角度から撮らなければ全体像を正しく捉えることができないように、物事も見る角度によって表し方が変わります。
よって報道機関が異なる情報を報じていたからといって、「どちらかが正しくどちらかが間違えている」と断定するのは明確に誤りです。どちらも正しい場合もあれば、どちらも間違えている場合だってあります。
もちろん明確に誤りやデマを報道しているメディアもありますが、少なくともメインストリームメディアは左右問わずまともです。それでも差が出るのはただただ単純に切り取った側面が違う、すなわち「誰もがバイアスを持っている」だけに過ぎないのですから。
問題なのはバイアスを持つことではなく偏見を補正しないことです。誰しもがバイアスを持っていることを自覚し、それを調整する必要があります。
よって重要なのは多数の側面を収集して中庸に観測することです。「正しいであろう情報源に情報を頼る」のではなく「多様な情報源を比較観測して正しいであろう情報を自分で判断する」ことが必要になります。前者は偏向の強化に過ぎず、後者は偏向の認識です。
まあ、これも道を誤ると「自分が正しいと思う」ことに囚われて陰謀論へ冒進してしまったりするので難しいところではありますが。
それを避けるためには「自分の判断」も同様に多数の側面から見てもらうことが必要で、しかしそれは自分の判断を批評・否定されることに慣れなければいけないため、万人がすぐにできる類のものではなかったりします。
情報リテラシーは一日にして成らず、です。
こういうのもある
記者クラブを代表に日本の報道は横並びであることが批判されがちですが、本場アメリカの絶望的なまでの情報分断と比べればどちらがマシかは判定が難しいかもしれません。
冒頭で述べたように、アメリカでは同じ事象を報道していてもメディアによってまったく内容が異なります。そこにどのような偏りがあるかを個別に調べるのは良い脳トレではありますが、多少億劫です。
そういった問題はもちろんアメリカでも認識されており、その作業を肩代わりしているメディアもたくさんあります。その一つがAllSidesです。
AllSidesではメディアの偏向度合いを専門家とユーザー投票で決めており、それぞれのニュースに対して左・右・中道の報道を比較してみることができます。各ニュースを多面的に見ることができてフィルターバブルからの脱却に役立ちますので、一読の価値ありです。
結言
私のような機械屋は学校で製図を学びます。
今時は3DCADが主流ではありますが、機械製図の基礎は2Dです。よって立体的な機械を表すために2Dで三面図の描き方を最初に学びます。
三面図とは「正面」「横」「真上」など三方向から見た図を別々に描く手法です。三方から見てようやく、その機械や部品がどんな形状をしているかを把握することができます。
ニュースも同様に、せめて三方から見たほうが正しいであろう情報に辿り着けるのではないかと私は思っています。その点で、「左」「中道」「右」の三視点を提供してくれるAllSidesのようなメディアは好みです。