忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

「で?」と「なんで?」の違い~思考力を鍛えるのに質問は役立つ

 スポーツ選手にとっては鍛え上げた肉体が商売道具です。走ったり投げたりすることは人間の機能の一つと言えますが、スポーツ選手がそれで商売になるのは他の人よりも抜きん出た脚力や持久力、投擲力などを持っているからです。

 エンジニアは思考力が商売道具です。物事を考えることはやはり人間の機能の一つです。だからこそ思考力で商売をするのであればスポーツ選手の肉体と同様に鍛え上げなければなりません。どれだけ物を知っていて物事を深くしっかりと考えられるかがエンジニアとしての能力を分けます。スポーツ選手が肉体を鍛えるため日々トレーニングに明け暮れているように、エンジニアは日々思考力を鍛えるトレーニングに明け暮れるべきです。あえて悪い言い方をしますが、一般の人と同じ程度の思考力のエンジニアなんてお金を払う価値がありませんのでイラナイです。うーん、辛辣。

 走ったり投げたり考えたり書いたり話したりは機能の一つに過ぎませんので、それが苦手でも出来なくてもなんら問題はないでしょう、ただそれらを飯の種にするのであれば人よりも鍛え上げて抜きん出なければいけないよね、というだけの話です。

若手にはガンガン質問する派

 というようなことを若手エンジニアには必ず教えています。辛めの現実ですが、まあリアルではあります。

 思考力を鍛えるため、若手のエンジニアが何かを質問してきたり報告を上げてきた際に私は必ずどう考えたかを質問をするようにしています。若手のエンジニアには事前に必ず通達します。

「僕はどうしてそう考えたかということを質問するから、何を聞かれるかとかどうしてそう考えたかとかをしっかりと考えてから僕のところに来てね」

という感じにです。質問されることはかなりのプレッシャーを感じかねないため、予防というか予習です。というか先輩に質問されるのは実際もの凄いプレッシャーですし。

 「何でこう考えたの?」という質問は下手をすれば「お前何考えてんの?」という詰問に取られかねないものです。そうではなく、ただ素朴に思考力を確認するのが目的であり、自らしっかり考えてそれを説明する練習をさせるために質問するのであってビビらなくてもいいよ、ということを呑み込ませておきます。

「で?」と「なんで?」の違い

 もう一つ若手へ事前に伝えているのは、私が質問でよく使う「で?」と「なんで?」の違いです。

君の報告を聞いて僕が「で?」って言った時はイエローカードだから気を付けてね。直球で翻訳すると「その程度しか考えてないのか?」とか「だからなんだよ?」って意味だからさ。あんまり言わせないように頑張って考えてから報告しに来てね。僕が「で?」って言った時は「出直します」ってUターンして逃げてもいいよ、もう一回しっかり考えてから来てね。もちろん何が不足しているかを聞いてもOK。怒ってるわけではないからちゃんとヒントをあげるよ。

逆に僕が「なんで?」っていう時は責める気持ちなんて一切無いから気にしなくていいよ。どこまで深く考えてるかを確認するための質問だから。「良い感じだ、もう一声いけるかな?」っていう意味だから、むしろ順調だと思っていいくらい。この「なんで?」を乗り越えられれば君の評価は僕の中で凄く高くなるから挑戦してみてね。

僕は読心術が出来ないから君がどの程度考えているかを察してあげることはできない、だからたくさん質問して確認する。でも君が成長してちゃんと考えられるようになったことが分かれば僕も質問する必要は無くなる。最初のうちはたくさん質問するけど、最終的には僕が質問をしなくてもいいようになることを目標としようか。

 これをやっていると最初のうちはなかなか上手く考えを説明できなかった若手も徐々に考えを整理してから報告をするようになり、最終的には先手を打って説明が出来るようになります。質問をする必要が無くなるところまで来れば無事成長して立派な思考力が身に付いたということです。

初期段階

「これこれこういう結果になりました」「で?」「ええと・・・」「なんでこういう結果になったか、この結果について君はどう思うかを考えてもう一度持ってきてね」

中期段階

「これこれこういう理由でこんな結果が出ました」「なんで?」「このデータから見てこうなっているからです、これはこの場合でしか考えられません」「そうだね、じゃあどうしようか?」「次はこういう感じで進めたいと思います」「いいんじゃないかな」

最終段階

「これこれこういう理由でこんな結果が出たんで次はこんな感じで進めますね」「OK、いいんじゃない?あー、あれは大丈夫?」「対策済みっす」「ばっちりじゃんか」

 必要な情報を必要な分だけ報告できる、ツーカーな状態まで至れれば完璧です。

 若干プレッシャーを与えてしまうため使いこなすには細心の注意が必要ではありますが、質問による思考力の育成は有効だと考えます。

余談

 まあ若手からすれば硬い顔をして考え事をしている先輩の所に行って何かを報告したり、そんな先輩から「で?」「は?」「だから何?」なんて言われるのはおっかないものです。無駄にビビらないよう、私は意図や目的、指導方針なんかは全て事前に説明しておく派です。教育意図を察しろなんて高度なことは求めませんし、ちゃんと説明しないのは指導側の手落ちだと考えます。