忘れん坊の外部記憶域

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顧客問い合わせの応対~プロの仕事に求められるレベル

 今日は顧客とのやり取りにおける少し贅沢なレベルの話をしましょう。

 顧客とのやり取りは様々な業界で様々な形で行われますが、私が製造業に勤めている手前、製造業における顧客問い合わせを代表例として語ります。

 

顧客問い合わせへの応対

 顧客からの問い合わせは製造業では日常的な顧客との接点の1つです。

 語義的な意味での「問い合わせ」とは、不明な点について質問してその詳細を確認することで、自らが想定しているものと実態との差異を突き合わせて確認することが目的のものです。

 よって問い合わせへの応対では、相手の質問事項に答えることが一般的に正しい行動です。相手が不明に思っている事柄に対してこちらが回答を出せば、相手はその回答と自身の想定を突き合わせることによって不明な点を解消することが出来ます。

「こんな製品はありますか?」

「はい、こんな製品がありますよ」

「この動作は故障ですか?」

「いいえ、それは故障ではありませんよ」

「こういった物を作れますか?」

「はい、作ることができますよ」

 このような応対が出来るのであれば少なくとも顧客問い合わせへの回答としては最低限必要なレベルを満たしていると言えるでしょう。

 

 しかし、それで充分かと言えばそうではありません。これは最低限であり、顧客問い合わせへの応対にはさらに上のレベルがあります。

 

顧客問い合わせの共通点

 「何が欲しい」「こういうことをしたい」「こう出来ないか」「こんな問題が起きている」「これはどうすればいいか」といったように、顧客からの問い合わせの内訳は様々です。しかしこれらには一つの共通点があります。

 それは現状において不満や不足があり困っているということです。自身や自組織では解消しようがない問題を抱えており、それに困っているからこそ問い合わせています。

 よくビジネスシーンでは「問題は問題と認識されなければ問題ではない」という言説が用いられますが、まさしく、顧客問い合わせをしてくる顧客は現時点で問題があることを認識しており、その問題の解消を求めて問い合わせてくるのです。

 

答えるだけではプロではない

 この共通点に関する認識を持つと、先ほどの顧客問い合わせでの応対には不足があることが分かると思います。

「この動作は故障ですか?」

「いいえ、それは故障ではありませんよ」

 顧客は意図しない動作によって困っている状況であり、その顧客に対して「これは正常である」ことを伝えても顧客の抱えている問題の解消には不十分です。顧客が求めているのはそれが正常か故障かという情報だけではなく、自らが意図する動作をするやり方、自身が抱えている問題の解消方法だからです。

 確かにこの例でも顧客の問い合わせに答えてはいます。しかし顧客の期待に応えているとは言えません。

 

プロの仕事は応えること

 質問に対して持っている情報をただ答えることや、頼まれたことに対してその通りの答えを提示するだけではプロとは言えません。なぜならば顧客は聞いたことに対して100%必要な情報が返ってくるのは当たり前だと思っているものであり、そのまま100%の答えを返すだけでは顧客の期待を上回ることはなく、顧客満足度はまったく高まらないからです。

 顧客自身がしっかりと言語化できていないが、しかし明確に抱えている問題までも解決すること、顧客の期待に100%以上の応対をすることによって初めて顧客満足度は高まります。それが顧客の期待に応えるということであり、それこそがプロの仕事と言えるでしょう。

 前述の例であれば、それが故障ではないことを伝えるだけでなく、顧客が意図する動作をヒアリングで聞き出したり推定をして、最終的にその問題を解決するまでに至って初めて顧客満足度を高めることができるプロの仕事だということです。

 

誰にでも求めるべきものではないが

 もちろん誰もがプロであるべきだとは思いませんし、成る必要は無いとも思います。それは贅沢というものです。またプロであることを他者に強く求めるのも控えるべきでしょう。それは過剰品質や過剰サービスの横行を招きかねません。

 ですが、「求められているものに答えるのではなく応えることができるのがプロだ」、ということを意識してみると仕事に対して前向きになりやすく、仕事の質や楽しみが少し向上するかもしれません。

 要するに、プロ意識とは他者に求める戒律のようなものではなく、自己研鑽のための意識付けの道具だということです。