国家間では実に薄汚い策謀が飛び交うものです。
私たちはそれを垣間見て、
「なんて恐ろしいことをするんだろう」
と思いがちですが、
「たしかにそれは有効かもしれない、俺たちもやろう」
と考えることもできれば、
「そもそもそれは本当に有効で強力な一手なのだろうか」
と疑問を持つこともできます。
王道を歩めるのは強者だけである、今回はそんな話です。
スパイやプロパガンダは常識
先日、カリフォルニア州の小都市で市長が辞職しました。
中国政府による工作員として秘密裏に活動した罪を認めた結果です。中国政府の指示でプロパガンダを拡散し、アメリカの国内政治に影響を与えようとしたとされています。
このような事件への感想で「中国は恐ろしい」と思う人もいることでしょう。
とはいえ、どの国も他国の世論・文化・価値観に働きかけて自国に有利な環境をつくるための活動は行っています。
それこそ有名どころで言えばCIAやMI6を筆頭に、どの国も情報機関や軍事部門が非合法の工作活動をしているものです。そしてもちろん合法的な活動、例えば文化交流や国際援助なども並行して行われます。
合法的手段と非合法的手段、使えるものは全て使うのが国際的な常識です。非合法的なスパイ行為を直接禁止する条文はありませんし、禁止しても実効性はなく、国家主権の問題にも踏み込みかねないため、スパイ行為は「やられるほうが間抜け」とされます。
その点で言えば日本はちょっと特殊で、非合法的な工作をするだけの予算や仕組みが整っていないため、基本的に合法的な手段を主軸としています。まあ実は国民に内緒で暗躍している機関があっても不思議ではありません。国際政治の論理で言えば「やっていないほうがおかしい」ことですので。
よって中国だけを殊更恐れる必要はありません。
日本が珍しいだけで、どの国もやってることです。
むしろ疑問に思うべきは「なぜ中国はこのような非合法的手段をメインに用いているのだろう?」です。
権威主義の"弱み"
民主主義国家よりも権威主義国家のほうが非合法的手段による秘密工作に対して思い切りが良いと言いますか、あまり気にせず行うことができるのは事実です。国内で情報統制が効くため失敗しても国内で批判が起きにくいですし、政府の正当性が国民からの信頼と選挙に依存していないこともありハードルは低いと言えます。
ただ、そもそも秘密工作は合理的で効果的な手段かと言えば、必ずしも是ではありません。上手くいけばそれなりのベネフィットを得らえることもありますが、失敗のリスクは高く、成功しても国家の評判は上がりません。非常にギャンブル的な手法です。
比較して、表立っての文化交流や公開外交、留学生制度や国際援助、経済協力やルールメイキング、価値観外交や人権外交、サミットの開催や文化発信など、合法かつ透明性のある手段は秘密工作よりも「コストが低く」「リスクも低く」「効果が持続的」です。
つまり秘密工作とは恐れるべき強者の技ではなく、言ってしまえば他に手段を持っていない弱者の戦略です。
中国は国際的なソフトパワーが弱く、長い歴史や文化を持っている割に他国へ影響力を及ぼせていません。政治体制が不透明で他国から信頼されていないため、政治影響力も限定的です。国際メディアを自由に運営できていないため、都合のいいプロパガンダを合法的に流すこともできません。
中国が秘密工作に頼るのは北朝鮮などと同様に、他の手段がロクに使えないからです。
よって、前述したようにスパイ行為は「やられるほうが間抜け」ですので注意する必要はありますが、権威主義国家の秘密工作を殊更に恐れる必要はありません。
結言
まあ、簡単な話です。
『友達料を払って友達を作っているような人』
と
『表立って「友達になろうぜ!」と元気に声をかける人』
の比較みたいなもので、どちらが強いかと言えば明白でしょう。
視点を変えることも効果的です。
日本が国策としてやっている「クールジャパン」なんて、他国への影響力工作・プロパガンダ以外の何物でもなく、極めて強力なソフトパワー/メディア網/国際協力関係/発信力の賜物であり、秘密工作とは合法的か非合法的かの違いだけです。
韓国の音楽輸出もしかり、アメリカの文化輸出もしかり、裏でこそこそやるしかできない権威主義国家からすれば、こちらのほうがよほど恐ろしいかと思います。
余談
個人的には「王道を歩めるのは強者だけ」というよりは「王道を歩もうとするものが強者になる」と考えていますので、秘密工作に頼らず真面目に合法的な手段を模索した方が長期的には良いのではないかと思っています。
まあ、すでに持っている側の国民がそれを言うのは傲慢ではあるのですが。