忘れん坊の外部記憶域

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2021年の脆弱国家ランキング(失敗国家ランキング)を見る

 アメリカのシンクタンクの平和基金会(The Fund for Peace:FFP)が各国の状況を数値化して毎年ランキング化しているのが脆弱国家ランキング(Fragile States Index;FSI)です。初期のころは失敗国家ランキングと呼ばれていましたが、2014年からは脆弱国家ランキングに変わりました。

 (個人的には失敗国家とかいう直球なネーミングのほうが好きです。)

脆弱国家ランキングとは

 このランキングは国家の崩壊に対してどの程度脆弱かを評価するもので、12個の指標からスコアを付けています。スコアは各10点満点で、脆弱なほどハイスコアとなります。満点は120点で、0点に近いほど安定的で持続可能な国家です。

 2020年度のスコアとランキングが2021年5月に発表されましたので見てみましょう。

日本の順位とスコア 

 日本の順位は161/179位です。順位が高いほど脆弱国家ということですので、日本は脆弱国家ではないという評価です。むしろかなり安定的な国家と見られています。ここ10年間は概ね160位前後をキープしていますので、優秀といっていいでしょう。

 2020年度の各スコアは次の通りです。

1.8 C1:Security Apparatus(安全機構,治安)

2.6 C2:Factionalized Elites(エリートの派閥)

2.5 C3:Group Grievance(集団の不平)

3.7 E1:Economic Decline(経済の衰退)

1.9 E2:Uneven Economic Development(経済発展の不均衡)

2.9 E3:Human Flight and Brain Drain(海外への人材流出)

0.5 P1:State Legitimacy(国家の正当性)

1.8 P2:Public Services(公共サービス)

3.0 P3:Human Rights and Rule of Law(人権と法の支配)

5.7 S1:Demographic Pressures(人口動態圧力)

3.2 S2:Refugees and IDPs(難民と国内避難民)

2.6 X1:External Intervention(海外からの干渉)

32.2 Total(合計)

 全体的にスコアが良いため、「安定した良い国家ですね」としか言えない感じではありますが、一応弱みを分析してさらに改善できるかを検討してみましょう。

スコアの内訳 

 まずダントツでスコアが悪いのが人口動態圧力の5.7です。この指標が昔から日本のスコアの足を引っ張っています。

 これは【人口/公衆衛生/食品と栄養/環境/資源リソース】のサブカテゴリから数値化されています。

 日本は人口増加率が低くて人口密度が高く、自然災害が多いことからこのスコアが低くなっています。自然災害はどうにもなりませんが、少子高齢化をなんとかしないことにはこのスコアの改善は見込めそうにありません。

 

 次に低いのが経済の衰退の3.7です。

 これは【財政/経済状況/経済情勢/経済の多様化】のサブカテゴリから数値化されています。

 日本の場合は政府債務とGDP成長率が強く影響していると考えられます。それでも3.7は世界的に見ればそれほど悪いものでもありませんので、まだまだ大丈夫でしょう。ただどのようなインデックス、ランキングを見てもGDPが足を引っ張っていることが多いため、なんとか景気を回復して成長できるといいのですが…

 

 次に低いのは難民・国内避難民の3.2です。

 これは【難民/国内避難民/変化への対応】のサブカテゴリから数値化されています。

 2011年までの調査では低かったのですが、東日本大震災以降は少し高めの値で固定されてしまっています。未だに地元へ帰れない避難民の方々がいらっしゃいますので、早く復興が進んで戻れるように祈るばかりです。

 

 総じて、少子高齢化・経済・被災地復興が日本が持続的に発展するための課題と言えます。特に驚きの要素は無く、思った以上に普通の結論となりました。

 1位、179位との比較

 最後に1位と179位と比較してみましょう。

 1位はイエメンで、合計スコアは111.7です。年々順位が上がっていき、ここ3年は連続で1位を取ってしまっています。現在も反政府勢力との内戦が続いており、日本の外務省が発表する危険情報ではレベル4:退避勧告(どのような目的であれ渡航は止めてください)となっています。

 反対に179位はフィンランドで、合計スコアは16.2です。一番高いスコアでもE1:経済の衰退における2.9であり、あらゆる面で安定的かつ持続可能な国家という評価です。

 日本よりもスコアが良いのは北欧諸国・ヨーロッパの一部、カナダ、オセアニアといった国々です。不安定よりは安定しているほうが良いと思いますので、日本もさらに順位を伸ばせるよう頑張りましょう。