少し前ですが日本は海外駐在員に人気が無いという記事を読みました。
調査の内訳が気になるので、中身を見てみましょう。
Expat Insiderとは
Expat Insider(海外駐在員の内部の人/消息通)はコミュニティ形成支援サイトInterNationsが毎年発表している国際ランキングです。
調査は実際に海外で働いている人々からいくつかのカテゴリに分けて1~7点で質問をして、それによってランキング付けをしています。回答者数が50人以上にならない場合は除外されるためランキングに登場する国の数は毎年変動していますが、日本は毎年ランキングに登場しています。
ここ3年の日本の順位を見ると、2019年は39/54位、2020年は25/60位(環境と持続可能性ランキング、都市ランキングでの東京は53/66位)、2021年は54/59位でした。アンケート形式であること、毎年のように評価方法や対象が変化していることなどはありますが、最新のランキングでは真ん中くらいだった順位から一気に落ち込んでワースト10入りしてしまっています。最初に紹介した記事では”納得”のワースト6位とありますが、InterNationsにデータの残っている2014年以降のランキングでも日本がワースト10入りしたのは2021年が初めてですのでそこまで納得感はありません。
Expat Insider2021
2021年の調査結果の内訳を見てみましょう。ただ定住者が少ない影響か、調査結果の中に日本についてのコメントや詳細情報はほとんどありませんでした。そのため各項目の順位を見て推察する形となります。
Quality of Life
Quality of Life:人生の質・・・21位
Leisure Options:余暇の選択肢・・・39位
Personal Happiness:個人の幸福・・・53位
Travel&Transportation:旅行と交通・・・10位
Health&Well-Being:健康と福祉・・・18位
Safety&Security:安全と治安・・・11位
Digital Life:デジタルの生活・・・56位
Quality of the Environment:環境の質・・・12位
幸福とデジタル化がかなり低い順位となっています。日本人の幸福度を考えると致し方ない順位ではあります。デジタル化についても上位のフィンランドやエストニアと比べればまだまだどころか圧倒的にアナログが多いため、これも現状この順位に甘んじる他無さそうです。
Ease of Settling In
Ease of Settling In:馴染みやすさ・・・58位
Feeling at Home:実家のような安心感くつろげるか・・・58位
Friendliness:友好的か・・・46位
Finding Friends:友人の見つけやすさ・・・55位
壊滅的な順位です。どこが良い悪いというよりも全部悪いです。ブービーなので分析コメントも載っています。「日本は常に下位10位にいるわけではないが、例年この指標では悪い評価を受けている。日本語の習得が難しい、現地の文化に馴染みにくい、待遇は良いが現地コミュニティの一員として見なされていない。」ということのようです。否定する資料を探すまでもなく実態に即しているような気がします。
Working Abroad
Working Abroad:海外勤務・・・50位
Career Prospects&Satisfaction:キャリアの展望と満足度・・・50位
Work&Leisure:仕事と余暇・・・57位
Economy&Job Security:経済と雇用の安定・・・25位
キャリアの満足度とワークライフバランスの順位がとても低いです。調査結果にはある米国人男性の言葉が書かれています。
"The work-life balance here(in Japan) is atrocious."
優しく翻訳すれば「日本のワークライフバランスは最悪だ。」というところです。atrociousはextremely bad、極めて悪いというニュアンスであり、日本語にすると[残虐な/残忍な/凶悪な/非人道的な]という意味の英語です。思っている以上に外国人は日本のワークライフバランスを問題だと思っていることが分かります。
Personal Finance / Cost of Living
Personal Finance:個人の資産・・・54位
Cost of Living:生活にかかる費用・・・38位
このカテゴリ―は総合ランキングには影響を与えません。しかしながら順位は他の指数と同様に低いです。生活費の指数は中の下といったところですが、可処分所得が少ないために個人資産では順位が低くなっています。日本の所得の伸び方を見る限り、これもまた妥当な順位かと思われます。
まとめ
日本がワースト6位というのにあまり納得できなかったため順位の内訳を見てみましたが、残念ながら思っていたよりも腑に落ちる内容でした。
どこから手を付ければいいのか分からないほどですが、日本人にも海外駐在員にも望ましいと思われる「デジタル化の推進」「ワークライフバランスの改善」「可処分所得の増加」あたりが今の日本には必要でしょう。