忘れん坊の外部記憶域

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巧遅は拙速に如かず~40点でもいいからまず提出すること

 ビジネスにおいて評価を得られる方法はいくつかありますが、その一つが早さです。中国の宋代に編纂された名作の選集文献「文章軌範」に巧遅は拙速に如かずとあるように、仕事における成果物は提出が早ければ早いほど評価を得られます。

 もちろん巧くて早いことが理想であることは前提です。完璧な成果物をあっという間に作れるのであればそれに越したことはありません。ただ、それがまだ出来ない若いうちは巧さよりも早さを優先したほうが良いです。

 

速さよりも早さ

 誤解の無いよう先に言葉の整理をしておきましょう。求められるのは速さではなく早さです。

 速いというのは単位時間内に行われる運動量が多いこと、動作が機敏であることを意味します。対して早いとは時期や時間に使う言葉で、ある基準の時間よりも前の段階であることを意味します。

 つまり早さを求められるというのはスピーディに行動しようという意味ではなく、ある基準よりも前、すなわち〆切前に成果物を提出しようということです。

 

なぜ早いほうがいいのか

 これは仕事を依頼する側の気持ちを考えると分かるようになります。

 例えば会議で使う書類の作成を上司が部下に依頼するとしましょう。上司はどんな資料が必要か、そしていつまでに必要かを部下に伝えて依頼します。

 まず、当たり前ですが遅ければ何の意味もありません。会議終了後に完成した資料を渡されても何の役にも立ちません。それがどれだけ立派な資料だとしてもです。〆切を過ぎるのは0点どころかマイナスであり、それよりは多少クオリティが低くても納期通りに提出することを優先したほうがいいのです。少なくともマイナス評価は避けられます。まさしく巧遅は拙速に如かずです。

 レストランでイメージすると分かりやすいでしょう。ものすごく美味しいけど席に座って24時間待っても料理が来ないレストランよりは、多少不味くても10分くらいで料理が出てくるレストランの方がマシなのです。前者はレストランとして成り立っていません。

 

 次に、依頼した上司の頭の中ではその依頼に対する成果物の品質と納期が想定されています。「大体いつ頃までにこのくらいのクオリティの資料が出てくるかな」という想像がされているわけです。その想像通りに成果物を提出した場合、「まあ予想通りだったな」で終わりです。つまり納期通りに100点の資料を作っても加点はされません

 上司が想像するクオリティを超えるというのはなかなか難しいものです。上司の考える100点を超えた120点を狙わなければいけないのですから、それには卓越した技能や上司の好みの把握、必要なクオリティの理解など様々な経験が必要になります。

 さらに言ってしまえば、若手の部下に対して上司は100点なんて別に求めていません、60点くらいでもまあこのくらいだろうと甘く判定しますので、マイナス評価をしたりはしないのです。よって実はクオリティは多少妥協してもいいと言えます。限度はありますけど。

 しかし納期の方は簡単です。ちょっと早めに手を付けて、ほどほどのクオリティのものを〆切よりも早く提出するだけでいいのです。それには技能なんて必要ありません、重い腰をちょっと早く上げるだけです。お得なことに、〆切よりも早く提出しているのですからクオリティはさらに妥協してもらえます。

「お、案外クオリティが高いじゃないか」と言わせてプラス評価をもぎ取るのはとても難しいですが、「お、案外早く提出できたじゃないか」は簡単にプラス評価をもらえるとても効率的な方法だということです。なにせただ早いだけでいいのですから。

 

早ければ手直しができるし助言ももらえる

 ここからがさらに重要なことです。

 部下の考える100点と上司の考える100点は違います。上司も完成物のイメージを部下へ伝えはしますが、テレパシー能力があるわけでもありませんので意図を完全に伝え切ることはできません。

 よって部下が精一杯頑張って作った100点だと思う資料でも「まだまだ不足があるな、70点」「こんなに装飾はいらないのに、60点」というような結果になります。特に若いうちは絶対にこのようなすれ違いが起きます。

 もしそんな資料を〆切当日に提出したらどうなるでしょう?手直ししている時間はありませんので上司からの評価は70点や60点で確定してしまいます。〆切当日なので早さの加点もありません。いえ、もし上司がなんとかそれを直そうとするようなことがあれば、余計な仕事が増えたと減点までされてしまうかもしれません。

 このような事態を避ける方法は簡単です。やはり早く提出すればいいのです。それこそ最初は40点の出来でも構いません。アウトラインを作ってとにかく〆切よりも早く提出すべきです。

 40点でもアウトラインがある程度出来ていれば上司はその後の完成形をイメージすることが出来ます。そうなれば「ここの部分は冗長になるから削っちゃって」「ここはもう少し説明が欲しいかな」「ここはフォントと色を変えてね」というように不足部分や要求を助言できるようになりますし、まだそれを手直しする時間だってあります。早く提出して成果物に対してフィードバックをもらうことで初めて100点を目指せるのです。

 だからこそとにかく〆切前に提出することが重要です。手直しして100点を目指すには出来る限り早く提出して手直しする時間を稼がなければなりません。

 

結論

 仕事の成果物を早く提出することで相手からフィードバックを受け取ることができ、100点のクオリティを目指すことが出来るようになります。100点の取り方が分かれば次回以降はもっと効率的に100点を目指せるようになりますし、そうなれば〆切を恐れることは無くなるでしょう。フィードバックを得るために、若いうちはとにかく拙速でいいので提出することです。

 学生時代のテストは一発勝負の100点狙いですが、社会人の仕事は何度も繰り返して100点ににじり寄るものです。その違いを早めに理解しておくとお得なのです。もちろん一発勝負の仕事もありますが、日頃からフィードバックを受けて100点を取れるようになっていれば恐るるに足りません。