忘れん坊の外部記憶域

興味を持ったことについて書き散らしています。

社会全般

知識を活かすことは、何もビジネスには限らない

「知識は持っているだけでは駄目で、活用しなければならない」 このような言説を時々見かけるかと思います。 この言説自体はとても正論です。役立てていない知識は持っていない知識と同義とさえ言えます。 ただ、この正論の曲解とまでは言いませんが、「活用…

「台湾有事は日本有事」とされる軍事的な理由

「台湾有事は日本有事か」と言えば、有事の定義が武力に訴えるような事件や事変が起きることである以上、ほぼ確実に日本有事です。政治や経済ではなく、単純に軍事的な側面からそうなります。 今回は軍事の理屈をなるべくシンプルに整理してみましょう。 兵…

改革において抵抗勢力をボコすのは下策

物事の変革や組織の改革において、抵抗勢力が生じるのは必然です。 改革に抵抗する人々には様々な理由があります。単純に変化を嫌う気質であったり、改革によって失われる部分への執着心や改革勢力自体への敵愾心、あるいは論理的思考による反対や総論賛成各…

社会の多様化と変化の加速に対するロールモデルの考え方

社会人のキャリア形成や女性の社会進出など、世の中では様々な事例におけるロールモデルの存在・非存在、そしてその是非が議論がされています。 確かにロールモデルは有効な場合もあります。ただ、現代ではロールモデルに依拠したライフスタイルの確立は限界…

差異の無い社会を目指すか、差異を活かす社会を目指すか、あるいはその間か

以前から頭に残ってはいたのですがどこで読んだのかずっと忘れていた文章を、先日ようやくどの本に書いてあったのか思い出したので、少し長くなってしまいますが引用します。 ハーバード・ロースクールの交渉術のクラスで、中国人の男子学生がアメリカ人の女…

「お気持ち」と”裕福な”インターネット

インターネット上でよく議論となっているテーマの一つに個人の感情の取り扱いがあります。何らかの事象に対しての個人的な感想を公開することの是非に関する問題で、インターネットスラングで言えば「お気持ち」と揶揄されるものです。 今回はそんな個人の感…

他国からの侵略は国家の安定性にどの程度影響を与えるか:ウクライナの事例

アメリカのシンクタンクである平和基金会(FFP)は各国の安定性を数値化して毎年脆弱国家指数(Fragile States Index:FSI)を公表しています。 ◆Fragile States Index | The Fund for Peace FSIの2023年版が先日発表されたことから、今回はウクライナの事例を参…

奨学金と大学無償化に関する議論へ提供する愚見

ここ最近、奨学金による借金苦の話、奨学金の帳消しを求める団体の話、また奨学金に関連して大学無償化の議論を眺めていました。 今回はお金に疎い私がこれら議題に関する個人的な素人見解を述べていきます。 奨学金の帳消しに関して まず奨学金の帳消しにつ…

管理職の椅子を増やせば女性管理職を増やせるか

今回は学術的な根拠の一切ない、ただの思い付きを語っていきます。独立行政法人労働政策研究・研修機構が発行する『データブック国際労働比較2023』をパラパラと読んでいた際にふと考えてみただけの、価値のない妄言です。 女性管理職の割合と椅子の数 日本…

ステレオタイプのアップデート:日本と諸外国の若者の意識調査

ステレオタイプとは、多くの人に浸透している固定観念や思い込みのことを指す言葉です。 人は様々な物事をステレオタイプ的認知によって処理しています。それは思考の効率化・省力化であり、日々様々な情報を処理しなければならない現代社会において必要な行…

難民問題に関する一つの視点:日本が抱える国内避難民

ここ数年、難民問題と入管法改正に関して色々と議論が紛糾しています。 各国で難民の定義や国家の仕組みが異なることから、国際的に一律のルールを定めることは難しいため、日本としてどのように難民や出入国管理を対応していくか議論が深まるのは良いことで…

決断と独断専行の境目

独断専行は指揮官が現場の状況に応じて受けている命令に反することを決心する行為を意味する軍事用語ですが、現在では単独の判断で事を行う行為を意味する言葉として広く用いられています。 軍事における独断専行は必ずしも批判的に扱われるものではなく、む…

誰もが合意できるユートピア像は、存在しない

同僚との会話の記録。 私「最近、どうすれば全ての差別や不平等をなくせるか、ちょっと考えていたんですけど」 同僚「また壮大なこと言ってんな」 私「まず、収入に差があったら平等じゃないですよね。だからみんな同じ収入にすればいいと思うんです」 同僚…

正義に客観性を:『正義感』の暴走を防ぐために

『正義中毒』や『正義マン』など、世の中には正義の暴走を戒める言葉が存在しています。 なぜ正義が暴走するかについては様々な識者がそれぞれの見解を述べていますが、僭越ながら私も一つ、思っているところを述べていきます。 そこまで新規性の無い論考で…

アイデンティティを外部に依存することのリスク

日本は失敗を許容しない国。 日本は失敗したら終わりの国。 このような表現が用いられることもあるかと思います。 少し古典的な表現ですが、切腹のような価値観が日本にはある、そういった話です。 今回は、命を失ったり手足を失ったりするような類の物理的…

テロリズムは抑止すべきだし、社会問題は解決すべきである

二律背反ではないはず。 テロリズムの定義 まず、念のためにテロリズムの定義について整理します。 テロリズムは時代によっても意味の変わるとてもレンジの広い言葉なので、今回は大雑把に英語Wikipediaから定義を持ってきます。 Terrorism, in its broadest…

「感情的な思いやり」と「偉大な思いやり」の区分

先日投稿した『共感』についての記事を書くためにポール・ブルームの『反共感論』を最近読み直したのですが、そういえばなかなか示唆に富んだ言葉の紹介をしているものだと思った部分があったことを思い出しました。 ネットで検索してもこの部分を引用したサ…

共感の持つ問題とその取り扱い:社会の道徳的指針

およそ2年ほど毎日ブログを更新して様々なテーマを取り扱ってきましたが、その中でも一番取り扱いが難しいと感じているのが『共感』に関して言及することです。 今回はその『共感』について、及び腰ながらも正面から言及していきます。 共感に関する考え方 …

「強者から弱者への配慮」の感情での否定と道徳的な肯定

「頭の良い人は頭の悪い人に合わせなければならない」 「強者は弱者を助ける必要がある」 この手の類の言葉が、実のところあまり好みではありません。 道徳的には肯定していますが、感情的には否定しています。 そんな、社会的には少し不適切な考え方を提示…

差別やハラスメントの法制化と客観化の受容

昨今、差別やハラスメントの法制化が徐々に進んでいます。代表的なハラスメントであるパワハラやセクハラ、マタハラはすでに法制化されていますし、今は性的マイノリティへの差別禁止に関する法律案がよく議論されています。 差別やハラスメントは社会にとっ…

時事的な話を試しに取り扱ってみる【放送法の政治的公平】【日韓輸出管理】

この駄ブログではあまり時事ネタを取り扱っていません。 時事ネタは情報が流動的であり下手をすれば不正確な情報の拡散に手を貸してしまう危険があること、時事的に係争している案件では意見が両極端に分かれて対決し合っていることが多く中道の意見を述べに…

社会運動と当事者性:第三者が参画することへの是非

社会問題を議論されている場で、時々当事者性に関する言及を見かけます。 当事者性に関する言及は二種類あり、発信側による「当事者ですがこれについては~」や「当事者ではないので推測ですが~」といった形、もしくは受信側による「当事者でないなら語るべ…

そもそも『貧困』とはなんだろう?

政治や経済、格差や社会を語る上で頻繁に出てくる言葉の一つに『貧困』があります。 しかし具体的に何をもって貧困と指しているのか、どのような状態が貧困なのかは個々人によって異なるイメージを持っていることでしょう。頻出するとはいえ、よくよく考えて…

女性議員比率に関する余計な思索:性自認と男女平等

誰が正解を語れるのだろう。 現状把握 男女平等に関する国際的な指標は様々ありますが、日本は多くの指標で低スコアの低順位です。 よくニュースで話題になる世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」やエコノミスト誌が毎年発表する「ガラスの天井指…

属性で区分することの問題:『高齢者』の資産を単純に再分配すればよいのか

現代日本において最も金融資産を持っているのは60歳以上の方々であり、金融資産シェアは60歳以上の方々が7割を占めています。 まあ、よくよく考えなくてもこれは当たり前のことです。培ってきた知恵と経験による高所得、積みあげてきた貯蓄、人生における大…

ペイウォールの向こう:情報を加工する手間の外注

ゆきにー (id:yuki_2021)さんがペイウォールについて語っていた記事を読んで思うところがあったので、ペイウォールと情報に関する個人的な考えを整理していきます。 ペイウォールに関して ペイウォール(Paywall)は読んで字の如く『お金を払わないと通れない…

「正しさ」のメッキを剥がした後に残るもの:目的は手段を正当化しない

アメリカのオバマ元大統領が2019年に行ったスピーチがとても好きです。 スピーチの一部を記述したワシントンポストの記事からオバマ元大統領のコメント部分を訳してみましょう。 他人に石を投げつけたって世の中は変えられない “There is this sense sometim…

社会的なリスク許容度は誰が決めているのか

アメリカへ短期出張をする際に念のためマスクを多く持っていったのですが、ほとんど使いませんでした。現在、アメリカでマスクをしている人は少数派で、大人数が集まるところでもマスクをしている人はほとんどいません。 対して日本へ帰国後はずっとマスクを…

小さな共同体の限界と都市化の利益

われわれが自分たちの食事をとるのは、肉屋や酒屋やパン屋の博愛心によるのではなくて、かれら自身の利害にたいするかれらの関心による。われわれが呼びかけるのは、かれらの博愛的な感情にたいしてではなく、かれらの自愛心にたいしてである。 アダム・スミ…

異なる価値基準の寛容:「分かり合う」そして「さて置く」

異論は攻撃してもいい、といった一部の風潮がどうにも好みではない。 SNSや雑誌・記事などで社会問題を取り扱う議論の場を見ていると、常々そう思います。 わからないものはわからない 以前、自然科学の領域における考え方の紹介として、「わからないものは…